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■ 20070919 ユニバーサルデザインチェック |
「福島県立附属病院のUD検証」
ユニバーサルデザイン・結 副代表理事 管野真由美 理事 佐藤 玲子 NPO法人ユニバーサルデザイン結では、飯坂のUDチェックに参加してくださった市内の障がい者団体の求めにより、福島県立医大附属病院のユニバーサルデザインチェックを行いました。 検証には、結の協力団体と高校生や、常日頃病院を利用する、車椅子・白杖の方など、30名程が、それぞれの立場で真剣に病院の協力をいただき、結いの理念であるスパーエキスパート(建築・環境、ものづくり、教育等の専門家と共に、障がい・高齢の能力の異なる当事者が問題を解決する)の考えにより検証しました。 昨年には、飯坂温泉のまちなかと共同浴場のUDチェックを行い、共同浴場は、地元の資産としてまちの魅力の一翼を担う今、古いが故の段差をはじめとするハード面は、ソフト面で極力カバーしたとしても、抜本的な整備が早急に迫られる、と総括させていただきました。 まして、福島県立附属病院こそ、最もユニバーサルデザインに配慮していて欲しい施設、と早速検討に入り、病院さんからご快諾をいただき、スタッフの方々との事前の打ち合わせが始まりました。
始まってすぐに思い知らされました。よくよく考えれば、当然と言えば当然だったのですが、スタッフのみなさんが「病院にとってユニバーサルデザインの配慮は生命線である」という強い共通の認識を持たれていることでした。「命の尊さはみな同じ」との見識からくる、ユニバーサルデザインへの思い入れを、垣間見たように思いました。そして、だからこそ私たちもご参加いただくみなさんと、病院のこの姿勢に応える、今後に活かしていただけるUDチェックにしなければ、の思いで当日を迎えました 1.ユニバーサルデザインチェック の順でユニバーサルデザインチェックを行いました。 ワークショップ “見つけたUD!” A班からC班までそれぞれにユニバーサルデザインチェックをして、それぞれに見つけたユニバーサルデザインを3つ書き出します。さらに、班ごとにそれらを3つにまとめ、代表者が発表しました。 ![]() ● まず、どの班も駐車場の使いやすさを上げています。障がいを持つ人が自分で運転してくる場合のために、玄関近くに駐車スペースが設けてありました。一般駐車場も、列ごとに駐車可能かどうかの電光表示などがあり、止める場所を探してうろうろすることもなくなりました。 ![]() まとめ ~データ・ワークショップから言えること~ 当日は、「この病院は、『ユニバーサルデザイン』という言葉のなかった昭和62年に建設」され、『ユニバーサルデザイン』という言葉はなかったけれど、体にダメージを抱えた方に安全で安心して使っていただけるように、たとえば避難階段への開閉扉の、少しの力で開く長いレバーハンドルが取り付けられている、など見過ごしてしまいそうなところまで、担当のスタッフの方に説明していただきながら、院内外を回ることができました。 UDチェックに参加された方々の第一声です。高低2段に手摺があり、しかも冷たくない素材でできている、総合窓口には高低2種類の受付カウンター・記載台があるなど、『ユニバーサルデザイン』という言葉はなかった時すべての叡智と技術の粋を集めて建設された建物、ハード面の整備が進んでいる、と参加者のみなさんから高く評価されました。 ![]() トイレも清潔で使いやすい、との声が多く出されました。特に総合会計脇のみんなのトイレには、荷物の載せられる脱衣かごが置いてあって、このさりげない心配りがとてもうれしく思いました。 列ごとに駐車可能かどうかの電光表示があるなど、駐車場の使いやすさも高く評価されました。 ただ実は、UDチェックのご相談をいただくきっかけでもあったのですが、玄関近くに障がい者用の駐車スペースはありますが、いつ来ても止められない、そこから東に行ったところに障がい者用の思いやり駐車場もありますが、バスやタクシーあるいは乗せてきてもらった場合は、正面玄関前で降りればすぐ入り口ですが、たとえば車椅子に乗り換えて玄関入り口へ向かうには、雨の日雪の日などはかなり距離があってたいへん、との声を聞きました。 一般的な医院の、障がい者用の駐車スペースと医院入り口との距離を思い出しても、如何せん遠く感じられ、総合病院・大病院なるが故のスケールデメリットになっているように、参加者の方々と一緒に歩きながら思いました。 また、障がい者用のおもいやり駐車場利用カードの制度も、初めて来た人はカードを持っていない訳で、困って駐車場の非常呼び出しをしたら、「カードを取りに守衛室まで来てください」と言われて途方に暮れた、という声も耳にしましたので、利用する方の状況を考えると、今少しの工夫をお願いしたいと思いました。 スタッフの方々のホスピタリティをそこここに感じられただけに、とても残念に思いました。病院内では、ボランティアの方がいるおかげで、初めてでも決して不安になることなく、安心していられましたので、院内ばかりでなく、来院者が病院の敷地内に入ってから帰路に着くまでも病院の範囲、と考えていただき、できれば混雑時だけでも、駐車場にも誘導のボランティアのような方がいて、小さなお子様連れの乗り降りや、車からの車椅子の出し入れや移乗のときに、手を貸していただけたらどんなに助かるだろう、と思いました ○「もうちょっとなんだけど・・・」 ![]() ま た、病院内に入ってすぐの総合窓口には高低2種類の受付カウンター・記載台がありましたが、その後の 各科の受付や待合室、それから診察終了後の会計カウンター高さまでの一貫した流れにまではなっておら ず、今後の改装が待たれるように思いました。 総合 会計脇のみんなのトイレは、見ていると空く間もなく次の方、といった具合に利用されることが多いよう で、「このみんなのトイレの他に、1階売店向かいにも2階エレベーター降りてすぐにも、みんなのトイレがあります」とのとてもありがたい情報が貼ってあるのですが、残念なことにこの紙が貼られている高さがスイッ チの上の高さで、車椅子の 方が困っている時には、視界に入りにくく気づくのが難しいようでした。 ○ ホスピタルはホスピタリィティであふれ 体にダメージを負った方々が、快方に向かうことを願ってやって来るのが病院ホスピタルです。しかも医科大学病院は、特に深刻なダメージの方が多いと思います。命と向き合う、不安を抱えた人もいます。参加者の方々から「もうちょっと」とご指摘いただきました点は確かにありました。けれど、参加されたみなさんが異口同音に言われていたのが、それらすべての使いにくさを超越して余りある、そういった不安を払拭してくれるような、ボランティアの方々はじめスタッフのみなさんの笑顔や心遣い、ユニバーサルデザインの高い見識からくるホスピタリティーでした。 また、スターバックスコーヒー、ローソンなどのアメニティ要素も、病院においてはユニバーサルデザインの役を担っていることは驚きでした。参加者の方から語られた「このような閉鎖的な空間に、社会の中心にあるものがあることで、自分も社会の一員であることを認識できる」との言葉には考えさせられました。 この度、医大の方々がユニバーサルデザインの検証を受け入れてくださり、このような機会を作っていただきましたことは、患者にとって大きな喜びでした。 今回の企画では、障害のある方たちと共にと院内を回ることで、自分とは違った見方と触れることができました。例えばトイレの入口に段差が無いことが完璧なUDだと思いこんでいました。しかし、障がい者の方から「入口が狭く、これでは車イスがようやく通れる位」という意見で、私は健常者の目線で物事を見ていることに気付きました。 「だれでもトイレ」の新設や病院入り口付近に車いす利用者等のための駐車場ができたことをはじめ、駐車場全体が大幅に改善されていることなどを知りました。UDの視点に基づいた創意工夫と見直し改善が着々と進んでいることがわかり、大変嬉しく感じました。案内表示も誰もがわかりやすい文字の大きさや配色などに配慮されていると思いました。 私はインテリアデザイナーを目指しているので、今回UDに触れことはとても貴重な体験になりました。 さて終わりに、こうした参加していただいた方々の声を、是非今後の改修計画に活かしていただきたいと思いました。ユーザーエキスパート・・体のダメージによってはもっとこうなっていたら、ということもこれからまだまだ出てくるかもしれません。でも、ユーザーとともに考えていけば、心のユニバーサルデザインを常に心に刻んでいれば、越えられないバリアーはない、と行き交うスタッフの方々の姿に思いました。そしてユニバーサルデザインの殿堂とも言える、これ以上ない最強の病院に進化し続けていただきたい、と思いました。
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